会社案内や商品の取扱説明書など、パンフレット印刷に幅広く用いられる「中綴じ製本」。身近な冊子でよく見かける製本方式ですが、レイアウトやページの割り振りなど、中綴じならではのノウハウがあるのをご存知でしょうか。これから冊子を作成する予定がある方に向けて、中綴じ製本の基本的な知識をご紹介します。
中綴じ製本とは、見開きの状態の紙を重ねて中央を針金で綴じる製本方式です。シンプルなつくりなので仕上がりも早く、翌日出荷に対応している印刷会社もあります。金額的にも、冊子印刷の中ではいちばんリーズナブルです。
とはいえ、表紙も背表紙もできますので、コート紙などパンフレット印刷に適した用紙を使用すれば、本格的な冊子に仕上がります。綴じた用紙を半分に折った形状は、強度にも優れており、記念誌や周年誌など大事な場面の冊子としても遜色ありません。
ただし、針金で綴じて二つ折りにする中綴じ製本は、あまりページ数の多い冊子には不向きです。1枚の紙に両面4ページ分を印刷しますので、ページ数は「4の倍数」。一般的に中綴じ製本には32~40ページ程度が目安とされています。印刷紙の枚数で言えば、8~10枚程度です。
中綴じ製本は、綴じ部分の根本までフラットに開くことができるのが大きな特徴です。2ページを見開き1ページ分として大きく使うことも可能ですので、大きな写真やイラスト、図版も効果的にアピールすることができます。仕上がりがA4サイズのパンフレットなら、見開きはA3サイズです。レイアウトやデザインの自由度が増し、迫力あるページを作ることができるのは、中綴じ製本ならではのメリットだと言えます。
横書きの印刷物なら左にページを開いていく「左綴じ」、縦書きなら右にページを開いていく「右綴じ」を選ぶのが通常ですが、カレンダーのように上にページを開いていく「天綴じ」という方法もあります。見開きページの使い方や効果も考えて、綴じ方向を選ぶのがおすすめです。
中綴じ製本のデメリットは、ページ数や紙の厚みによってはズレが生じる場合があるということ。半分に折るとノド(中央の綴じ部分)に厚みが生じますので、ページ数が多いほどズレが大きくなります。製本後の仕上がりが気になる場合は、事前に印刷会社によく相談したほうがよいでしょう。
中綴じ製本のデータ作成では、「面付け」が難しいと感じる方が多いようです。面付けとは、冊子にしたときページが正しい順番で並ぶようにページレイアウトを考える作業です。中綴じ製本は、1枚の用紙に4ページ分印刷して重ねて綴じる方式ですので、そのことを念頭に中綴じ製本の面付けを考えてみましょう。
たとえば8ページの中綴じ冊子なら、1ページの隣は8ページ。裏面は2ページと7ページが配置されます。2枚目は3ページと6ページ、裏面は4ページと5ページを配置するという具合です。わかりにくいという方は、いらない紙などを折って使って実際のページ数のサンプル冊子を作ってみましょう。表紙から順番にページ番号を書き込んで、バラバラにしてみると面付けの理屈がよくわかります。ただし、印刷会社によっては、いまご説明したような「対向面付け」での入稿ではなく、ページの順番通りデータを入稿するよう指定される場合もあります。また、「対向」「ページ順」どちらでも入稿可能な場合もあります。ページ指定方法については、事前に印刷会社に確認、相談しておくと安心です。
また、中綴じ製本は、先ほどもご紹介したようにノドの部分に生じる厚みのせいで、半分に折ると中央付近の用紙が張り出し、外側に近いほど短くなります。そのため、印刷会社では小口(ページの両端部分)を裁断して仕上がりサイズを整えるのが通常です。つまり、ページの隅ギリギリに文字やイラストなどを配置すると、裁断時に切り落とされてしまう可能性があるということ。データ作成の際は、その点に留意してゆとりをもってレイアウトしましょう。紙面に背景色を使用する場合は、裁ち落とし分を想定して、仕上がりサイズより3mm程度余分に広げて色を入れておきましょう。
今回は中綴じ製本についてご紹介しましたが、ページ数の多い印刷物なら、中綴じ以外の方法で製本するほうがおすすめです。
冊子の背(綴じる側)の内側5mm程度の部分を、針金や糸で綴じる製本方式です。綴じ代の分が取られますので、ノドいっぱいまでページを開くことはできませんが、厚みのある冊子でもしっかりと綴じることができ、丈夫な冊子に仕上がります。教科書やカタログなど、強度が求められる冊子に適しています。
針金や糸などを使用せず、強力なのりで背を固定する製本方式です。何ページあっても製本できますので、分厚い冊子はほとんど無線綴じが使われていると言っていいでしょう。雑誌や文庫本、カタログなど幅広く用いられています。耐久性もありますが、あまり大きく開きすぎるとのりの部分が割れて、冊子そのものが壊れる場合もあります。
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