写真を使った印刷物を作る際には、できるだけその写真が美しく見えようにする必要があります。特に商品カタログやパンフレットなどは、写真の質が売上げにも影響する可能性があるため、写真の仕上がりが特に重要なポイントになります。
そこで今回は、写真や画像を印刷する上で欠かせない「解像度」について、その仕組みを詳しく解説します。
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「画像解像度」というのは、デジタル化された画像の精度のことです。デジタルカメラで撮影した写真などをパソコンで拡大していくと、細かな点がたくさん集まって表示されているのが分かります。全てのデジタル画像は、この細かなドット(点)の集合体でできています。
このドットが1インチ(2.54cm)あたりにどのくらいの密度で集まっているのかを数値化したのが「画像解像度」というわけです。解像度を表す単位には、「dot per inch(1インチあたりのドット数)」という英語を略した「dpi」という単位が使われています。
72dpiとは1インチあたり72ドットの画像解像度ということになります。
72dpi=1インチあたり72ドットの画像解像度
同じく350dpiとは1インチあたり350ドットの画像解像度です。1インチという単位は変わらないので、72ドットあるのと350ドットあるのとでは粒の細かさが相当違いますね。
350dpi=1インチあたり350ドットの画像解像度
一般的に、解像度が高ければ高いほど画像はきめ細かい表現が可能になり高品質な印刷や出力になります。一方、解像度が低くなるほど画像の鮮明さは失われていきます。画像を使う場合には、この解像度が大変重要になってくるというわけです。
また「dpi」と同じく解像度を表す単位に「ppi」というものもあります。「pixels per inch(1インチあたりのピクセル数)」の略で、ほとんどdpiと同じ意味で使われますが、印刷での単位はほとんどの場合dpiを使用します。
では、もしチラシやパンフレットなどの印刷物を作る際に、画像解像度が低い写真や画像を使うとどうなってしまうのでしょうか?
解像度が低いということは、その画像を構成するドットの密度が低いということですから、画像解像度が低いと写真がぼやけてしまったり、ジャギって荒く見えてしまったり、画質が悪くなってしまいます。パソコンで見ている分にはきれいな写真であっても、解像度が低いものは実際に印刷をしてみると画質の悪さが目立ってしまうのです。
例えば、企画書などを作るときに、Web上から写真を探して使う方は多いと思います。一般的に、Webで表示される解像度の目安は72dpiとなっており、画面上では綺麗に表示されています。しかし、72dpiの解像度では印刷用途としては低いため、印刷するとぼやけてしまう場合があるので注意しましょう。
通常のフルカラーの印刷物の場合、画像解像度は原寸サイズで350dpiが適切です。300dpi〜400dpiを謳っている印刷会社がほとんどです。
フルカラー印刷には原寸サイズで画像解像度350dpi
これは一般的な印刷線数175線(1インチあたりの網点数)の2倍という基準から設定されています。
印刷線数175線に対して画像解像度175dpiでも問題がなさそうですが、実際には印刷は網点によるアナログな表現で、一方、画像解像度は規則的に並んだデジタルデータであるため、データ通りにはきれいに印刷されません。そこで、網点の角度やインキ、用紙などの諸条件を加味して、2倍程度の画像解像度を基準としています。
もしも、そこまでの画像解像度が用意できない場合、最低でも1.5倍程度の260dpiが必要です。それ以下では、鮮明には印刷できない可能性があります。
画像解像度は最低でも260dpi(品質を保証するものではありません)
解像度は高ければ高い方がいいのかというとそうではありません。人間の目が画質を認識できる範囲は限られているので、500dpiや1000dpiにしてデータ上の解像度を上げても、印刷の仕上がりにさほど変化はありません。逆に解像度を大きくすればするだけ、出力に時間がかかったり、画像データサイズが重くなり扱いにくくなる場合があります。
また、モノクロ原稿(グレースケール)の場合は600dpi、モノクロ2階調の場合は1200dpiが推奨となります。1色になったことで、網点で再現したときにエッジ部分がギザギザして目立ちやすいために、解像度を高めに設定して滑らかに再現するイメージです。
モノクロ原稿(グレースケール)は画像解像度600dpi
モノクロ原稿(モノクロ二階調)は画像解像度1200dpi
これらもフルカラー同様、無駄にこれ以上解像度を上げる必要はありません。
ポスター印刷の場合、画像解像度は200dpiでよいという話は聞いたことがあるでしょうか。ポスターや路上広告などの大きな印刷物は扱う画像サイズも大きくなり、データ制作が重くなってしまいます。ポスターは近くで凝視するものではなく、印刷物から離れた場所から見ることが多いので、解像度は200dpi程度でも問題ありません。ただし、近くで見てもきめ細かい再現が必要な場合には、300dpi以上が必要な場合もあります。印刷会社とも相談してみましょう。
ポスターは場合によって画像解像度200dpi
画像解像度と印刷の原寸サイズを決めるもう1つの要素が画像サイズです。画像サイズはピクセル(px)で表され、ドットと同じ意味で用いられます。
例えば1200万画素数のデジカメで撮影した画像データの場合。1200万画素とは約4000px × 約3000pxのピクセル数の画像サイズです。このデータを350dpiの解像度で印刷する場合、どのくらいの印刷サイズになるかは下記のように計算することができます。
画像のピクセル数[px] ÷ 解像度[dpi] × 25.4 = 印刷サイズ[mm]
25.4は1インチあたり25.4mmなので、mmに換算するためです。
実際に1200万画素の画像データで計算してみると
長辺 4000[px] ÷ 350[dpi] × 25.4 ≒ 290[mm]
短辺 3000[px] ÷ 350[dpi] × 25.4 ≒ 217[mm]
となります。297[mm] × 210[mm]のA4サイズとほぼ等しいサイズです。
つまり、1200万画素数のデジカメの画像データは350dpiの解像度でA4サイズを印刷するのに十分ということになります。
実際に印刷で使用する原寸サイズに適した画像サイズを求めるには下記の式になります。
印刷サイズ[mm] × 解像度[dpi] ÷ 25.4 = 画像のピクセル数[px]
例えばA5サイズ(210[mm] × 148[mm])の印刷に適した画像サイズを求める場合は、先程の式を用いて下記のように計算できます。
長辺 210[mm] × 350[dpi] ÷ 25.4 ≒ 2893[px]
短辺 148[mm] × 350[dpi] ÷ 25.4 ≒ 2039[px]
つまり、A5サイズの印刷を適切な解像度で印刷するには、約2039px × 約2893px(600万画素程度)以上の画像サイズが必要になります。
一般的な印刷物のサイズと、全面に印刷する際の画像サイズを一覧にしました。
印刷サイズ[mm] | 主な用途 | 画像解像度[dpi] | 画像サイズ[px] |
---|---|---|---|
B1 728×1030 | ポスター | 200 | 約5732×8110 |
A1 594×841 | ポスター | 200 | 約4677×6622 |
A4 210×297 | チラシ、パンフレット | 350 | 約2893×4092 |
A5 148×210 | チラシ、フライヤー | 350 | 約2039×2893 |
148×100 | ポストカード、私製はがき | 350 | 約2039×1378 |
91×55 | 名刺、ショップカード | 350 | 約1253×757 |
「イメージメニュー」>「画像解像度」を選択します。そこで表示された現状の解像度を確認したあと、希望のサイズと異なる場合は解像度を変更します。
最初に「縦横比を固定」を選択して「画像の再サンプル」のチェックを入れ、「自動」を選択します。
印刷での使用サイズに合わせて幅・高さ・解像度を入力して、必要なサイズの画像解像度を設定してください。
「切り抜きツール」を選択して、「幅 × 高さ × 解像度」に切り替えて、画像を切り抜きたい幅・高さ・解像度を入力します。
範囲を調節して切り抜くと、サイズと解像度が設定された画像になります。
低い解像度の画像をPhotoshopによって数値上は高い解像度に設定できますが、一度低解像度に設定した画像や、最初からぼやけていたりジャギーの発生している画像に鮮明さを取り戻すことはできません。
デジカメやスキャナによって大きい画像データサイズを用意して、その画像を使用サイズに調整するのが基本となります。
解像度は画像や写真を使った印刷物の仕上がりに大きく影響する大切なポイントです。上記の内容を参考にして、解像度について正しく理解しておきましょう。印刷に関するご依頼、ご相談は、お気軽にVanfuまでご連絡ください。
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