ショップのフライヤーや広告などを作成した際に、印刷物の黒色の部分が薄すぎたり、裏移りしてしまったりと、思ったような仕上がりにならなかったという経験はありませんか?
実は同じ「黒」でも印刷で表される黒には3つの種類があって、それぞれ印刷結果が異なります。印刷物をイメージ通りに仕上げるためには、その違いをしっかりと理解しておくことが大切です。
色を表現する方法には「RGBカラー」と「CMYKカラー」という2つの方法があります。RGBカラーは主にパソコンのモニターやスキャナー、デジカメなどで使用されており、CMYKカラーは雑誌やパンフレットなどを始めとする印刷用のデータで使用されています。
RGBカラーでは「黒」は1種類のみですが、CMYKカラーでは「スミベタ」、「リッチブラック」、「4色ベタ」という3種類に分かれていて、微妙に色合いが異なります。印刷物の仕上がりに影響する部分ですので、それぞれの特徴をしっかりと理解しておくことが大切です。
「スミベタ」というのは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のうち、Kだけを100%にして黒インクのみを使って表現する黒のことです。1色だけを使うため、印刷の際に色がずれてしまう「見当ずれ」が起こりにくいというメリットがあるだけでなく、パソコンのモニターで見ていた色と実際の印刷結果が大幅に異なるという心配もありません。
また、スミベタは色を重ねて印刷するオーバープリント処理が行われることが一般的で、これによって背景の色や柄が前面に透けてしまうこともあります。
これは、パソコンのモニター上では確認することができないため、スミベタに重なる部分に柄や色を使っている場合には注意が必要です。
その他、黒の面積が大きい場合には、ピンホールという白抜け(色むら)が発生してしまうこともあります。こういったことから、細い線や文字などに使われるのが一般的です。
「リッチブラック」というのは、K(ブラック)に、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を掛け合わせて作る黒のことです。
K100%に対してC、M、Yをそれぞれ40%程度プラスするのが一般的で、スミベタよりも濃くしっとりとした美しい黒に仕上がります。ただし、4色を掛け合わせて黒を作るため、紙の収縮によって起こる見当ずれが発生しやすいというデメリットもあります。
特に、小さな文字や細い線の場合には、印刷物の文字がぼやけて見えてしまったり、ずれた色の影響を受けて異なる色に見えてしまったりすることがあるため注意が必要です。
また、文字を白抜きする際に背面の黒色をリッチブラックにしてしまうと、見当ずれが発生し、きれいに白抜きされない可能性があります。小さな文字や細い線、黒地に白抜きの文字を配置する場合には、リッチブラックではなくスミベタを使用すると良いでしょう。
「4色ベタ」というのは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の濃度を全て100%で掛け合わせて作る黒のことです。
4色ベタは、C、M、Y、K全てが100%ということで大量にインクを使うため、乾燥不良や裏移りといったトラブルの原因になることから、印刷物に使用されることはほとんどありません。イラストレーターで印刷物を作成する場合、レジストレーションカラーも4色ベタになるため、使用は避けるようにしましょう。
パソコンのモニター上では同じに見える黒でも、実際に印刷物になるとその仕上がりは大きく異なります。入稿の際には、上記の内容を参考にしてイメージに合わせて正しく使い分けることが大切です。
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