初期の電算植字システムは、コンピュータ制御によって専用文字盤から文字を選択し、1文字ずつ光を当てて感光材に印字させることで自動的に写真植字をおこなう方式の光学的電算植字システムであった。その後、さらに生産性を向上させるため高精細CRTの画面上に指定の文字サイズ、書体の文字形を発光させて印画紙やフィルムに投影し感光させる方式のCRT式電算植字システムが開発され、電算植字システムのシェアは拡大した。さらにプログラムの高度化により複雑なページレイアウトを伴う組版処理も可能となり、コンピュータ制御によるレーザー露光によって文字や線を感光材に印字するレーザー式電算植字システムの登場により電算植字の全盛期を迎える。
専用入力機によるデータ入力は、文字情報と組版、割付(レイアウト)情報に区分される。最初にファンクションキーとよばれるキー入力によって割付け指定と基本の組版指定のコード入力をおこなう。これをコマンド入力という。後は和文文字コードキーから文字コードを入力し、その前後に組版情報をコマンド入力して組み合わせて組版データを作り上げる。この一連の作業をコーディングという。このデータはFD(フロッピーディスク)にコピーし、電算植字システムにかけて入力データの演算処理をおこない一気に自動的にページレイアウトと組版処理がおこなわれる。これをバッチ処理(一括処理)といい、長文(大量のページ物)の制作が効率的におこなえるメリットがある。このバッチ処理の考え方は電算植字から、TeX(テフ、テック)のコーディング、そしてDTPのタグを使った自動組版にも受け継がれている。このようにコンピュータで自動的にページレイアウトすることをページネーションという。このバッチ方式以外に、組版や図版の貼り込み位置をモニタの画面上で確認しながら個別に指示していく対話方式の専用レイアウト編集機も登場したが、カラー情報や階調原稿が扱えず高額であったため主流とはならず、その後台頭したDTPのページレイアウトソフトに取って代わられた。
※TeXとは、スタンフォード大学の数学者クヌース教授が、複雑な数式や化学式などを含んだ文書を整形、清書するために作ったシステムのことである。仕様は公開されていて、自由に使用できるためバリエーションも多く、世界中で利用されている。数式を記述する必要がある分野では標準の文書規格になっており、最近は組版システムやDTPにも利用されている。日本語対応版には、NTTのjTeXとASCIIのpTeXがある。
※タグは、1バイト文字を複数組み合わせて文字列を作り、文字列に文字組みの書式指定の意味を持たせたテキストコードのことである。