湿し水に求められる能力は、親水性、保水性、修復力の3点である。湿し水の表面張力を下げ親水性を高めると、細かい非画線部にも湿し水が浸透しインキと水の境界面が鮮明になるので、画線部のエッジがシャープになる。インキが付く前に湿し水が蒸発しては、乾いた版面にインキが付着することになるので、版面上で水を保つ保水性が要求される。
また、版面は絶えずローラーやブランケットの摩擦を受けており、紙粉やコート剤などで非画線部の親水性層が傷つくことがあるため修復しなければならない。インキの乳化などで非画線部に汚れが付着するので洗浄もしなければならないなど、湿し水には様々な能力が要求される。