
新しい印刷機の「豆のような柄」は何?コントロールストリップを調べてみました
ある日、新しい印刷機の刷り出しを見ていたときのこと。紙の端にあるコントロールストリップを眺めていると、見慣れない柄が目に入りました。
「ん? このコーヒー豆みたいな形は何だろう……?」
コントロールストリップが、印刷中の色の状態を確認するためのものだということは知っています。しかし、この柄はこれまで見たことがありません。よく見ると、色の四角だけでなく、細い線や、何も印刷されていない白い部分もあります。機械によって柄が違うのでしょうか。そして、一つひとつの柄にはどのような役割があるのでしょうか。
気になったので、竹橋プリンティングセンターで話を聞いてみました。
話を聞いたのはこの方々!
竹橋プリンティングセンター
プレートプランニング課
篠原さん
竹橋プリンティングセンター
印刷課
松田さん
「コンストについて話を聞きたいです!」という私のお願いに対して
「喜んでお答えします。ぜひ竹橋までお越しください。」と迎えてくださいました。
コントロールストリップとは?
コントロールストリップとは、印刷中のインキの濃度や印刷状態を確認するために、紙の端に配置されている管理用の柄です。完成品の絵柄とは別に印刷され、印刷後は断裁によって切り落とされます。そのため、通常、お客様が完成品で目にすることはありません。
私も、コントロールストリップではインキの濃度を確認している、ということまでは知っていました。しかし、今回あらためて聞いてみると、確認しているのは色の濃度だけではありませんでした。
小さな四角や細い線など、それぞれの柄に異なる役割があります。

画像の下方、緑の線で囲ったところが“コントロールストリップ”と呼ばれる部分です。
色の四角では、インキの濃度を確認している
コントロールストリップの中で目立つのが、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの色が並んだ四角い部分です。この部分は「ベタパッチ」と呼ばれ、インキの濃度を測定するために使われています。
印刷物の色は、インキを紙にどの程度のせるかによって変わります。インキが多すぎても少なすぎても、狙った色には仕上がりません。そこで、ベタパッチを測定しながら、適切な濃度で印刷できているかを確認します。
完成した印刷物の絵柄だけを見て色を判断するのではなく、測定用の柄を使って印刷状態を数値で確認しているのです。

画像の緑枠で囲んだ部分が、ベタパッチです。
CMYKの各色の濃度を確認するための柄で、コントロールストリップの中に繰り返し配置されています。
細い線は、印刷の「ダブり」を見るためのもの
コントロールストリップには、細い線が並んだ部分もあります。
これは「スラー用パッチ」と呼ばれる柄で、印刷中にダブりが発生していないかを確認するために使われます。
ダブりとは、印刷された線や文字がわずかに二重になったように見える状態です。紙の動きや印刷機の状態などによって発生することがあり、細かい文字や線では、仕上がりの鮮明さにも影響します。
一見すると単なる細い罫線に見えますが、印刷がきれいに再現されているかを確認するための柄ということでした。

画像の緑枠で囲んだ部分が、スラー用パッチです。
印刷中にダブりが発生していないかを確認するための柄で、版(色)ごとに繰り返し配置されています。
豆のような柄は、印刷機が見当を合わせるための目印
今回、私が気になったコーヒー豆のような柄は、印刷機が見当を合わせるために計測する柄でした。
オフセット印刷では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの色を一色ずつ重ねて印刷します。このとき、それぞれの色の版が正しい位置に重ならないと、絵柄の縁に色がずれて見えたり、文字がぼやけて見えたりします。
この版の位置を合わせることを「見当合わせ」といいます。
竹橋プリンティングセンターにある新しい印刷機では、機械がこのコーヒー豆のような柄を読み取り、各色の版の位置を計測し、調整してくれます。私にはコーヒー豆のように見えた小さな柄も、印刷機にとっては、色を正しい位置に重ねるための大切な目印でした。

画像の緑枠で囲んだ部分が、見当合わせ用の絵柄です。機械はこの絵柄を計測して位置調整しますが、印刷機長はトンボを見て見当を確認します。
何も印刷されていない白い部分にも役割がある
さらに意外だったのが、コントロールストリップの端にある、何も印刷されていないように見える白い部分です。
ここでは、紙そのものの白さを読み取っているとのこと。
同じ色のインキを使っても、印刷する紙の白さや色味によって、見え方は変わります。そのため、印刷された色だけではなく、基準となる紙の白も読み取る必要があります。
柄が印刷されている部分にばかり注目していましたが、何もないように見える場所にも、きちんと役割がありました。

画像の緑枠で囲んだ部分は何も印刷されていませんが、ここは紙の白さを読み取っている部分とのこと。紙自体に濃い色がついている用紙の時は、機械で読み込めないので印刷機長が判断するそうです。
コントロールストリップの柄は、印刷機によって異なる
今回、複数の印刷機のコントロールストリップを見比べてみると、柄の並び方や形がそれぞれ異なっていました。
色の四角が大きく並んでいるものもあれば、細かな柄が多く配置されているものもあります。私が初めて見た豆のような柄も、新しい印刷機で使われているものでした。
コントロールストリップは、すべての印刷機で同じ柄が使われているわけではありません。印刷機の測定方法や仕組みに合わせて、必要な柄が配置されています。

これまで機械ごとの違いを意識して見たことはありませんでしたが、並べてみると、それぞれに特徴があることが分かりました。
スキャナの設置場所と役割は、印刷機によって異なる
印刷機によって異なるのは、コントロールストリップの柄だけではありません。コントロールストリップを読み取るスキャナの設置場所や、測定できる内容にも違いがあります。
竹橋プリンティングセンターの印刷機を見比べると、スキャナの構成には次の3つのパターンがありました。
・ 印刷機の内部と外部の両方にあるもの
・ 印刷機の内部にあるもの
・ 印刷機の外部にあるもの
外付けのスキャナでは、印刷した紙を機械の外で読み取り、インキ濃度などの色の状態を確認します。
一方、スキャナが印刷機の内部に組み込まれている機械では、印刷中にコントロールストリップを読み取り、測定結果を色の調整につなげることができます。
さらに、内部と外部の両方にスキャナがある機械では、色の状態に加えて、見当合わせに必要な柄も計測しています。
コントロールストリップの読み取り方も、印刷機によって異なります。スキャナの設置場所や役割にも、それぞれ違いがありました。

竹橋プリンティングセンターでは、スキャナの設置場所が異なる3種類の印刷機を確認できました。
これは印刷機の内部と外部の両方に、スキャナが設置されている機械です。

こちらはスキャナが印刷機の内部に組み込まれている機械です。
その為、印刷機長台にはスキャナがついていません。

これは印刷機の内部です。水色で囲んだガラス部分が、印刷機の内部に組み込まれているスキャナです。
緑色で示した開口部を通して、その下を流れる用紙上のコントロールストリップを読み取ります。
印刷機が最高毎時16,500回転で稼働しているときも、流れる用紙上のコントロールストリップを連続して測定できるそうです。
あの小さな柄を、この速さで読み取っているなんて、すごい!

こちらは印刷機の外部にスキャナが設置されている機械です。
見比べて分かった、コントロールストリップの幅の違い
コントロールストリップは、印刷機によって幅も異なります。
私は、コントロールストリップの幅が面付け(※)や取り都合に影響することは知っていました。ただ、今回あらためて複数の印刷機を見比べてみると、コントロールストリップの幅は、思っていた以上に機械によって異なっていました。
紙の端にコントロールストリップを配置する分、その部分には完成品となる絵柄を配置できません。そのため、同じ大きさの紙を使う場合でも、使用する印刷機によって、実際に絵柄を配置できる範囲が変わります。
印刷物のサイズや部数だけでなく、コントロールストリップを含めた印刷可能範囲も踏まえて、使用する印刷機や絵柄の配置を検討しています。
※…面付けとは、1枚の紙の中に印刷する絵柄を効率よく配置することです。
まとめ
コントロールストリップは、印刷後に断裁されるため、通常は完成品には残りません。
お客様からは見えない場所ですが、その中では、
・インキの濃度
・印刷のダブり
・各色の見当
・紙の白さ
など、印刷品質を安定させるためのさまざまな情報が確認されています。
今回、新しい印刷機で見つけた豆のような柄をきっかけに、コントロールストリップには、インキの濃度だけでなく、ダブりや見当、紙の白さなどを確認する役割があることを知りました。
完成品には残らない部分ですが、その柄や読み取り方も印刷機とともに進化し、安定した品質を支えています。工場を見学する機会があれば、ぜひ紙の端に並ぶ小さな柄にも注目してみてください。
工場見学でコントロールストリップを見に行く
バンフー竹橋プリンティングセンターでは工場見学を実施しております。是非お越しください!

