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インドネシアの森で学んだ「紙づくりの未来」

〜エイピーピー・ジャパンとともに歩む、帆風のSDGs〜

帆風が15年以上にわたり取引している「エイピーピー・ジャパン株式会社(Asia Pulp & Paperグループ)」は、インドネシアを本拠とする世界最大級の総合製紙メーカーです。
竹橋プリンティングセンターに常備している「シナールDGグロスコートN」もAPP製。
高品質でありながら、大量生産による安定供給とコストパフォーマンスの高さが魅力。
日本の製紙会社が「木材チップを購入して製紙」するのに対し、APPは「苗を育て、森を再生しながら紙をつくる」――まさに森から紙までを一貫して行う、世界でも稀有なメーカーです。

エイピーピー・ジャパン株式会社のSDGsの活動の1つである森の再生プロジェクトへ参加。8月末にインドネシア・プカンバルの現地に入り、植樹活動を行ってまいりました。



エイピーピー・ジャパン様のプロジェクト解説動画(外部サイトで再生します)

目次[非表示]

  1. 1.インドネシア・プカンバルで見た「森の再生」
  2. 2.現地で巡った場所 ― それぞれの「森との関わり方」
    1. 2.1.■育苗施設
    2. 2.2.■植林地
    3. 2.3.■製紙工場
    4. 2.4.■APPのCSR活動 ― スマトラの森を守る人たち
  3. 3.帆風としての参加と支援
  4. 4.学んだこと、そしてこれから

インドネシア・プカンバルで見た「森の再生」

現地では、APPが運営する環境保護基金「ベランターラ基金」の活動地を実際に訪れ、その取り組みを肌で感じてきました。
このエリアは広大な泥炭地帯で、スマトラトラやスマトラゾウなど、絶滅の危機にある動物たちが暮らす貴重な場所。過去にさまざまな理由で荒れてしまった森林を、毎年10〜15ヘクタールずつ整地し、樹木を植えて、かつての原生林を取り戻すプロジェクトが進められています。
苗を植えたら終わりではなく、森が再び命を宿すまで、定期的なメンテナンスと地域の人たちの協力が欠かせません。

まさに「育てる」ではなく、「共に見守る」活動だと感じました。


現地で巡った場所 ― それぞれの「森との関わり方」

滞在中は、本当にさまざまな場所を見てまわりました。
どの現場にも、紙づくりの裏にある「自然との向き合い方」があり、通常の“工場見学”とはまったく違う学びがありました。


■育苗施設

最初に印象的だったのが「育苗施設」。
ここでは、紙の原料となるパルプを抽出できるアカシアやユーカリの苗がずらりと並んでいました。小さなポットの中に植えられた苗は、まだ20センチほどの高さしかありませんが、
これが数年後には高さ20メートルにもなる大木へと育つのだと思うと、生命の力強さを感じます。

しかも驚いたのは、クローン技術の発展によって、優良な苗を効率的に増やすことができるという点。品質の安定と持続的な供給が両立できるこの仕組みは、まさに「持続可能な紙づくり」の象徴だと感じました。




■植林地

その苗が実際に植えられているのが、広大な植林地です。
なんとその総面積は110万ヘクタール
数字だけ聞くとピンときませんが、東京都のおよそ5倍というスケールに圧倒されました。

植えた木はおよそ5年で高さ20メートルほどに成長し、そのタイミングで伐採され、パルプ原料として利用されます。
そして伐採された跡地には、すぐに新しい苗が植えられる――。
森を“使いながら守る”という循環型の仕組みが、しっかり根づいていました。





■製紙工場

製紙工場では、“森の恵み”が“紙”に生まれ変わる瞬間を目の当たりにしました。
巨大なロール状の原紙が、機械の中を流れながら次々と加工されていきます。一見「大量生産の現場」に見えても、その裏側には熟練の知恵と精密な技術が息づいていました。



■APPのCSR活動 ― スマトラの森を守る人たち

APPのCSR活動についても学ぶ機会がありました。
特に印象に残ったのは、違法な焼畑によって住処を失ったスマトラゾウの保護活動です。この地域では、焼畑農業の影響で象たちの生活圏が狭まり、人間との衝突も少なくありません。APPはその問題に正面から向き合い、保護林を整備して象たちの安全な暮らしを支えています。





そしてもう一つ、同じ「焼畑問題」をきっかけに生まれたのが養蜂の取り組みです。
紙の原料パルプを採るアカシアの花の蜜からハチミツを採取できることに注目し、地域の人たちと協力して養蜂園を運営しています。

この活動は、地元農家にとって新しい収入源になるだけでなく、森林火災の防止にもつながっています。かつては農地を広げるために焼畑を行うケースが多く、乾季になるとその火が燃え広がって大規模な山火事を引き起こすことがありました。しかし、養蜂によって「森を焼かずに得られる収入」が生まれたことで、焼畑に頼らない土地利用が定着し、結果として火を使わない、森を守る暮らしが広がっているのです。



帆風としての参加と支援

帆風グループは「ベランターラ基金」に賛同しています。
この寄付金は、インドネシア・スマトラ島やカリマンタン島での熱帯雨林の保護・再生、地域の雇用創出、そして絶滅危惧種の保護に役立てられます。

この取り組みは、国連のSDGsの以下の目標に直結しています。

  • 12番「つくる責任 つかう責任」

  • 13番「気候変動に具体的な対策を」

  • 15番「陸の豊かさも守ろう」

  • 17番「パートナーシップで目標を達成しよう」


「紙を扱う企業」として、この循環の一部に参加できたことは、非常に意義深い経験でした。


学んだこと、そしてこれから

見渡す限り広がるユーカリやアカシアの植林地。
その一本一本の木の向こうには、40年以上にわたり積み上げられてきたノウハウがあります。

環境保全・地域雇用・動物保護――どれも“持続可能な紙づくり”を支える大切な要素でした。
私はそのスケールと真摯さに圧倒されると同時に、「この姿勢をお客様にも伝えたい」と強く感じました。

帆風も印刷会社として、単に「紙を使う」だけでなく、「どんな紙を使うか」「その紙がどう作られているか」を大切にしていきたい。
そして、「印刷会社=環境に貢献できる会社」であることを、もっと多くの人に知ってもらえるよう、発信を続けていきます。


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